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REIT JAPAN 2019年インタビュー CBREグローバルインベスターズ(前編)

REIT JAPAN 2019年インタビュー CBREグローバルインベスターズ(前編)

松本道雄様

CBRE グローバルインベスターズ・ジャパン株式会社
取締役 投資企画部長

Michio Matsumoto| Director, Head of Acquisitions
CBRE Global Investors Japan K.K.

今回は、CBREグローバルインベスターズ・ジャパン株式会社 取締役 投資企画部長の松本道雄様に、世界の不動産市場の中での、日本の不動産市況と日本のREIT市場について、お話を伺いました。

 

RJ>リート市場、不動産市場を活性化するには? というあたりから、お話いただけますか?

お金の運用主題として、不動産、株、あるいは、国内、海外、とありますが、貯金するわけでなければ、普通に投資しようとすると株であったり、最近は金利もほとんどゼロですが、債権に投資しようという人もいるかもしれません。 また、インフラや、非上場株、あるいは仮想通貨という投資対象もありますが、そのような中に、REITとか不動産直接投資もあります。不動産への直接投資は個人投資家にとって多くの労力を必要としますが、REITは同様のリスクリターンプロファイルを持つ、より簡単な代替手段です。

株を買うよりREITを買った方がいいか?という質問に対して、私が話すまでもないですが、そこで一番いわれるのがREITは配当利回りが高いということがあります。 あとは、投資適格なものがどのくらいあるかというと、日本では、REITは2019年5月現在で時価総額約14兆円です。 REITのメリットは、REITという法人の中で税金がかからないことです。伝統的な不動産会社は法人税を支払った後に配当を行うので、REITに比べると配当が低くなってしまうのですが、REITに不動産を移そうとすると簿価と時価に差がある場合、譲渡益が発生して、そこで税金を払わなければなりません。米国ではUPREITという制度によって、REITに不動産を現物出資する際、不動産譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることを可能とし、REIT市場が成長しました。米国はREIT市場が日本に比べて大きい(2018年末時点で約115兆円)ですが、逆に三井不動産とか三菱地所のような不動産会社はありません。日本でいえばそうした不動産会社が行っていることを米国ではREITが行っています。 日本の会社が所有する不動産の簿価は通常非常に低いことが多いので、時価でREITに譲渡されたときにその利益に課税されます。日本の税務当局としては現時点での税金を取り損ねることになるので、なかなか米国のようににならないのかもしれず、これが、日本で市場規模が米国ほど急速に拡大していない理由の一つかもしれません。 あとは、今は、お金よりは、物件が少ない方が問題かもしれませんね。当たり前なんですけれども物があるときにはお金がないです。

RJ>先月、英国エコノミスト誌がイーコマースとロジスティクス関連の不動産についての記事で、CBREについても触れていましたが、やはりグローバルプレゼンスが、有利に効きますか?

CBREは親会社でグローバルに不動産に関するいろいろなサービス、例えば、仲介(売買・賃貸)、鑑定、コンサルを提供している会社です。我々は、投資顧問として会社としては別れています。ただ、同じCBREグループなので、コラボレーションしていいサービスが提供できているのではないかなとおもいます。世界的なプレゼンスも良い影響を与えていると思います。 弊社もそうですが、日本のロジスティクス関連の不動産投資は、他セクターに比べ、グローバルな企業が行っていることが多いですよね。日本では、賃貸倉庫という考えはあまり一般的ではありませんでした。外国人投資家が倉庫を所有し賃貸するというスタイルを確立していったイメージがありますよね。

RJ>知り合いが、ソフトバンクの物流と倉庫を担当しているのですが、ソフトバンクの倉庫もどんどんロボット化しているといっていましたね。   そうですね。物流には3つのコストがあります。賃料、物流コスト、人件費。

倉庫なのですが、物を保管しているだけのところから、配送センターのように人が必要になってきて、雇用が有利な場所に立地するようになり、次の世代に自動化が進んでいくと、また変化がおこるという状況ですね。

~不動産市場の全体像から ~

世界には、3500兆円相当の取引可能な不動産があります。 そのうち約3分の1がアメリカ、3分の1がヨーロッパ、そして3分の1がアジア(APAC)です。若干面白いところが、アメリカ、ヨーロッパはそのうち先進国がほとんどなのに対し、アジアは、エマージングアジアが半分ぐらいで、中国がそちらにカテゴライズされているというところですね。 また、一年間で、約100兆円の不動産が世界中で取引されています。 この取引の4〜5パーセントは日本で行われ、米国で約半分が取引されます。

都市別にみると、年によっても違うのですが、東京は概ねトップ5あたりです。 世界的にも今は割と不動産売買市場がヒートアップしているといわれており、賃料も上昇基調。株式市場も同じですが、大きな理由は量的緩和です。世界的にみて、日本の国債の利回り、つまりリスクフリーレートは他の国に比べて低いです。不動産そのものの利回りはそんなに高くはないですが、イールドスプレッド(不動産利回りと国債利回りの差)が高いので、日本の不動産市場は、世界的にみても投資をするのに魅力的な市場になっています。

~資産クラス グローバルから日本をみる ~

グローバルのアセットの話は、セクターでは オフィス・商業・物流・住宅等がありますが、さきほども物流のはなしをしましたが、一般的に言われている話として、商業施設の役割が物流施設にとってかわられるということがあります。商業施設の役割が変わって、都市型アップルストアのようにディスプレイの場になってきています。あるいは、エンターテイメント型として一日中そこにいて滞在する場所いうようにシフトしています。今後は、生鮮品のようなものまでどんどん物流会社による配送にとってかわっていく可能性もあります。 日本では、企業はかつて自前の物流会社を子会社として所有していました。しかし最近、彼らはサードパーティーロジスティクス(3PL)の会社を利用し始めました。例えば、日立物流、日通、センコーなどが、他の荷主のものをまとめて商売するということが増えてきて、いろんな荷主さんのものを取り扱いするので大きな倉庫を借りるようになっています。今は、大型倉庫への需要が増えてきて、東京でも大阪でも名古屋でも足りないという状況です。

RJ>契約交渉においてテナントが強い立場にあるということがありますか?また、不動産会社は、英国エコノミスト誌が書いていたように、このイーコマースの物流トレンドにのって、儲かっていくのでしょうか?

最近まで物流会社はもともと地縁を気にされる方も多く、家賃は慎重に管理されていました。商業施設等とは異なり、家賃はさほど増加するということもないのですが、日本では、賃貸契約は通常、普通借家が多くて、追い出すことは難しいのに対して6か月の通知ですぐ退去できるので、テナントの方が力関係では強い傾向がありますが、最近の新しい物流施設は定期借家が多かったりしますね。 オフィスは絶好調ですね。 亀田さんも借りようとされてよくご存じのように、今東京でオフィスの空きスペースを見つけるのはとても難しいです。弊社も、移転を試みて新しい場所を探したのですが、適当なものが見つからず、結局既存のオフィスをリノベーションすることにしました。 東京のオフィス供給は、2019年と2020年は25万坪、2000-2018は18万坪でした ほとんどビルは埋まっていまして、空室率は1%台。場所によっては1%を切っています。

今、日本全国どこでも空室率がものすごく低いです。日本のほとんどの都市で、歴史的な低空室率ですね。5パーセントをこえる場所がほとんどない。地方都市は供給がないのが大きな理由で、大阪はしばらく本当に供給がないです。

東京でオフィスは、空室率は、ピーク時でもグレードAの物件が10%、グレードBが8.5%程度でした。比較すると、米国のオフィスの空室率は今でも約13%。過去もそういうマーケットです。 ですので、日本の空室率は非常に低く、オフィス市場は絶好調です。住宅はわりと好調で、特に都市部については地方からの流入があるため日本全体の人口減にもかかわらずまだ順調で、特に東京は賃料が順調にのびています。
ファイナンスは、一時ちょっと慎重になったという話がありますが、機関投資家向けの貸出しは、依然好調。ご存知だと思いますが、スルガ銀行のかぼちゃの馬車の件で、個人向けの融資は割と慎重になってきていますが。

RJ>では、御社のお話に移らせていただいて、

CBRE Global Investorsは、投資顧問、ファンドマネージメント、およびアセットマネージメントを専門とするグローバル企業です。 2012年に、CBRE InvestorsがING Asset Management部門を買収しました。 INGはオランダの保険会社であり、ヨーロッパで強い基盤を持ち、アメリカの会社であるCBRE Investorsに統合されたCBRE Global Investorsは、グローバルな顧客基盤とグローバルな投資範囲を持っています。 そのなかで、弊社は日本の不動産への投資と日本の投資家に責任をもっております。 日本の不動産への投資につきましては、私達のクライアント投資家のクライテリアに見合ったリスクリターンの機会を追求します。 たとえば、最近取得したプロパティには、次のものがあります。

– 物流の開発、フォワードコミットメント、リーシングなどの開発リスクをとったもの

– 住宅をリノベーションしてリースアップ、バリューアップ

– いわゆるコアといわれる、安定収益が見込まれるもの、住宅のポートフォリオ

– 大阪の大型オフィスビル

RJ>さすが利回りが高そうですね。

それは、物件に応じて、バリューアップする等してですね。

~~ インタビューは、後編、に続きます。後編はこちらへ

 

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